敢えて李園に足を入れず 福井日銀総裁の誤算 2006/6/24
☆『李下に冠を正さず』という言葉があります。これは中国の諺で、李つまり桃が実っている木の下で帽子のかぶり具合を直すと、他の人から見ると桃泥棒に間違われるかもしれないから、敢えて紛らわしい行いをしてはいけない、という戒めの言葉ですよね。また同様の事柄を表すものとして『瓜田に履を入れず』というのもあります。瓜は地面に実をつけるため、瓜の畑には入るだけで泥棒と間違われるという訳です。
昨今のマスコミで日銀の福井総裁が村上ファンドに1000万円の投資を行い、1500万円前後の利益を上げていたと報じられておりました。
昨今世情を騒がせ、拝金主義の象徴とされている村上氏や堀江氏については、やはり世間は大変厳しい見方をしており、あろうことかその村上ファンドに対し、日本の金融界の総元締めである日銀の現総裁が私財を投資していたというのですから、やはり軽率のそしりは免れないところなのかもしれません。
なにしろ、超のつく低金利時代をずっと続けているのは日本銀行であり、1000万円をまともに銀行に預けた場合、同期間での利息はわずかに26万円にしかならないというのですから。金利が安い分全ては、バブルで踊った各銀行を助ける為に日本国民の金を搾り取って銀行に強制的に貢がせている、その大親分が日本銀行というわけです。
一般市民には26万しか儲けさせず、その間に自分は1500万も稼いだというのでは、誰しも納得はしないでしょう。そうでなくとも政府は相変わらず借金を垂れ流し、国の負債総額は827兆円にも達している時代なのです。
福井氏自体の能力や手腕については、経済界なども比較的高く評価しており、国会議員や高級官僚などに良く見掛ける疑惑や不正などは、彼については殊更存在しない模様であり、人物としては、日本にとって『有用な人』なのでしょう。
ただ、日本の金融をコントロールする立場にある者としては、いささか『脇が甘い』と言われても仕方ない所です。
諸外国も、この疑惑に対し敏感に反応しており日本経済全体の評価にも響いてきていることは厳然たる事実なのです。
『日銀の内規に抵触していない』から、この問題はコレでおしまい!とばかり、政府も強引にこの問題に対し幕引きをしたがっていますが、しかしそれでは特に外国から見た場合にも、今までの日本の『うさんくさい曖昧さ』をそのまま垂れ流してしまう事となり、世界経済体制の中で今後も各国と伍して行かねばならない日本国にとって、今後に多大な悪影響を残すこととなります。『フェアでない親分』のいる組織は他者からも見放され、そして身内からもモラルハザードが起こってくるのです。
日本政府の大借金の責任は小泉総理と自民党族議員そして利権温存の各省庁職員にあるとして、せっかく今までまがりなりにも日本経済を長いトンネルから脱出させ、成長方向へ向けて立ち上げてきた福井氏の手腕を惜しむ気持ちも多分にありますが、やはりここは政府として『泣いて馬謖をを斬る』決断を下すべきときと思います。
本来、彼の立場としてはこの問題に関しては、『李下に冠を正さず』のレベルではなく、日銀総裁に就任した時点で『李園そのものに足を入れてはならない』スタンスで臨まなければならないものなのです。
でなければ、昨今やっと日本社会も『コンプライアンス遵守』に大きく舵を切りつつあり、各企業や公務員の人達にも厳しい世間の目が注がれている時期であり、それに最上層の人間が自ら水を差す事となるのですから。 (それにしては、一部の国会議員や天下り役人などの『懲りない面々』も未だに多いようですが)
2006/6/24