衆議院を解散しないのは麻生氏の『権利の濫用』行為である! 2009/ 1/11



※権利の濫用:ある権限を与えられた者が、その権限を本来の目的とは異なることに用いることをさす。

☆1月5日から年頭国会が始まり、予算審議を中心に論議が行われております。
しかし、昨秋から持ち越した衆議院の解散については、様々な議論が続いている中、いっこうに具体性が見えてきません。
現状、与野党や各派閥間の駆け引きの道具にはされても、大方の国民が望んでいるはずの政界再編の方向は、全く五里霧中の状態が続いております。

 そしてその一番の原因は、麻生総理と一部自民幹部の思惑により、総理大臣の解散権を封じてしまっていることにある訳です。
本来この衆議院解散は、昨年9月に選任された麻生氏が即刻行うべき筋のものでありました。
法的には、衆院解散は『国事行為』であり、その行為者は天皇であるとされておりますが、実際の権限は間違いなく時の総理大臣が握っており『総選挙対策の顔、自民党最後の切り札』とされた彼が、即刻行うと誰もが信じて疑いませんでした。
ところが、幸か不幸かその後のリーマンショック以来の世界経済危機を理由にして、本来即時行うべき解散総選挙を、ずるずると延ばしに伸ばしてきて現在に至っております。

 現憲法下での衆院の解散総選挙は、今までに都合21回を数えるそうですが、そのうちで任期満了によるものは、76年の三木内閣時の1回のみであり、後は全て政権が比較的安定している時期においても、何らかの理由で解散が行われており、これがいわば日本の政治の基本スタイルとなっているのは各位ご承知のとおりです。

衆議院を解散する権限は本来内閣が保持しており、それに基づきその具体権限は先述のごとく実際上総理大臣に帰属しております。そしてそれはいわゆる『伝家の宝刀』として、日本の議会制民主主義のなかで一定の機能を果たしてきた訳です。 そして明文化されてはおりませんが大変重要なことは、彼等国政に関与する者達の『モラルと自負心の存在と具体的発露がその大前提にある』筈だということなのです。
 国民に選ばれ権利を預託された『選良』として『人間の常識と恥を熟知し、それを具体的に発現させる』ことの出来る人達こそが国政を預かっている、という基本がそこには不文律として、厳存することは明らかなのです。

 しかし、戦後長く政権を預かってきた自民党が、93年に一度下野し、94年6月に『自社さ連合』を結成し、無理やり政権党に復帰した前後あたりから、日本国政の政権抗争は『何でもあり』の時代に突入し、それに付随して彼等選良としての自負心やモラルも霧消してしまった感があります。 そしてその中で育ってきた彼等麻生内閣の面々には、もはや改めてモラルや常識を問うても無駄なのかも知れません。

麻生氏が『解散権の不行使』を決め込むことは、不祥事を追及された議員連中が『法律に示されていないから何をしても良い』とばかり、法の不備を楯に世間の常識を意図的に無視して、うそぶいているのと同じレベルの事なのです。 これはやはり、明らかに『総理大臣の権利の濫用』に当たると断言してよいでしょう。

当然行使すべき『衆議院を解散させる権利』を、意図的に『行使しない』のも、また『権利の濫用』なのです。



☆日本国憲法第12条に「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民はこれを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」と規定しており、この権利の濫用については、具体的には主に民法に定められております。

民法第1条3項は「権利の濫用はこれを許さない」と規定しており、その適用の是非については、権利行使者の受ける利益と、相手方の受ける不利益の客観的利益衡量によるべき、とするのが通説だそうです。

 今回の麻生総理の行為をこれに当てはめるならば

『権利行使者の受ける利益』とは、麻生総理および自民党の、政権与党として継続して権限を行使することによる利益 となりましょう。 対するは
『相手方の受ける不利益』とは、この場合は民主党以下の野党、というより、総選挙が行われないことにより民意が国政に反映されず、様々な損失を蒙る国民全体の不利益 となると思います。

 そしてその判断基準として『公序良俗に対する重大な違反や信義則違反など高度の反社会性』が挙げられております。

今回の麻生総理の『解散権の不行使』についても、当然衆議院を解散して国民の信を問い国政の方向付けを明確にすべきところを、自民党の党利党略の都合で意図的にサボタージュする、ということであり、必然的にその対象となるはずなのです。

 勿論、筆者は法律の専門家ではありませんので、法的に具体性を持った論の展開は出来ません。また、民法上の解釈を国政に適用することの是非についても議論の分かれるところではあるとは思います。 しかしやはり世間一般の常識に照らして考えた場合、明らかに、麻生総理が衆院解散を意図的に先延ばしすることは、国民に対する重大な信義違反であり、総理の権限の濫用に当たると考えてよいのではないでしょうか。

※筆者は、たびたびの衆院解散の流れそのものがモアベターであるというつもりはありません。基本的には、一度組閣したものは最後まできちんと任期をやり遂げるべきであることは、先項にも一部書いた通りです。 しかし、特に今回は誰が見ても国民の意思や想いと国政の方向とが、完全にミスマッチしており、即刻衆院を解散させ、小泉人気による自民圧勝の残滓を一刻も早く捨て去るべき時なのです。


法律に詳しい野党議員の皆さん、こういった見地からの与党追及はやらないんですかね。





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