CO2は資源である。 『グリーンニューディール』ではアメリカを救えない! 2009/ 2/ 12



☆アメリカの新大統領オバマ氏は、就任早々、現在の危機的状況にある米国経済建て直しの切り札として、『グリーンニューディール』を打ち出し、クリーンエネルギーの開発によって500万人の新しい雇用を創出しようとしており、そのために10年間で1500億ドルを投資することを約束しました。
それはそれで意義あることとして、しかしそこでは特に米国が断トツで排出量の多い二酸化炭素について、それを『大気汚染物質』と位置づけております。

確かに、過去のブッシュ政権下で野放しに放置されてきた環境問題、特にCO2排出問題に対して明確にNO!を表明し、ドラスチックに世論を環境重視に導こうとしている現時点において、それは取り敢えずのインパクトある標語に聞こえます。

 しかし、科学的、地質学的に見た場合、二酸化炭素は、生命にとっては断じて汚染物質でもなければ邪魔者でもなく、必要な物質なのです。
むしろ、大気中の二酸化炭素は、我々人類にとっても、大変貴重な『資源』ということが出来るのです。

◎陸上の植物は、大気中にCO2が無ければ光合成が出来ず、生きて行けません。農業にも適度なCO2は絶対に必要なのです。
◎海草などの海生植物においても、同様に海中に溶け込んだCO2を活用しているのです。
◎また適度な濃度のCO2は、温暖化ガスとして地球を暖めてくれます。
 過去数度にわたる氷河期においては、CO2の濃度が極端に低かった時期があり、大気中の二酸化炭素の濃度が低すぎても、地球の生態系にとっては、有害となるのです。

 つまり地球大気中のCO2の濃度は、適度な範囲でそれをコントロールできれば最も良いということであり、殊更二酸化炭素を『有害物質』扱いし目の敵にするのは、些か過激に過ぎると言わざるを得ません。
ブッシュ政権と違いオバマ氏は、極端な『キリスト教的二元論』には毒されてはいない筈なのですが。

 一部の科学者は、大気中の二酸化炭素の濃度をコントロールするのは容易いことである、と言っています。
世界の海洋中で、富栄養で太陽光が届き、なおかつ鉄分が極度に少ない海洋域に少量の鉄分をばら撒くと、大量の植物プランクトンが発生し、それが莫大な量のCO2を吸収してくれる、との実験データが存在しているといいます。
海洋学者の、故ジョン・マーチン氏の試算によると、120万トンの鉄で260億トンものCO2を削減できるそうです。
そして彼のセオリーを実践して大きな効果を上げている気仙沼の漁師さん達もいるそうで(『鉄が地球温暖化を防ぐ』畠山重篤 文芸春秋 2008/6)、CO2のコントロールについては様々な手法が存在し、ビョルン・ロンボルグ氏の言うように(『The Skeptical Environmentalist』山形浩生訳 文芸春秋社 2003/6)、ヒステリックにCO2を悪者扱いし、環境屋さんたちの利権に直接結びつくような短絡的な政府の取り組みは、特に景気減速の激しい現在、現に慎むべきことといえるはずなのです。
要は、その排出量と吸収量の差を適度にコントロールしさえすればよいのであって、殊更、悪者呼ばわりし邪魔者扱いすることは、長い目で見たときの判断を誤らせるものであると危惧するところです。

 では今、アメリカが本当に取り組むべきことは何なのでしょうか。 確かに、環境問題の取り組みについては、国としてのエネルギー効率が日本の半分以下という現状から見ると、その事についても轍鮒の急であることは事実なのでしょうが、それだけでは、今後も膨れ上がってゆく米国の莫大な債務に対し、有効な手立てとはなり得ない事は明らかなのです。

 今、アメリカそして人類全体が取り組むべきなのは、『ニューディール政策』の21世紀版ではなく、『アポロ計画』の21世紀版なのです。
アポロ計画は、人類を月に送るという壮大な計画の下、60年代のアメリカが威信をかけて行ったビッグプロジェクトであり、何より、その大きな波及効果により、科学技術全体の発展に大きく寄与し、人類の宇宙時代幕開けの象徴となったのです。
今回行うべきはまさにそれで、人類全体に、より大きなプラスの波及効果をもたらすものでなければならないのです。

 なぜなら、2008年秋以来の世界同時不況の影響で、各国政府とも1990年代の日本が経験した、景気対策のための未曾有の大判振る舞いをせねばならず、特にOECD諸国を中心に、日米を先駆として、殆どの国が今後莫大な借金に苦しむこととなるのが必定だからなのです。
GDP比で数倍以上に膨れ上がるであろう、将来に対するツケは、いずれ皆が何らかの形で支払わねばならず、若しそれがハードランディングの形で現れるとすれば、世界同時の『ハイパーインフレ』となることは必定なのです。
その場合、相当大規模な世界的混乱が予想され、特に『南側』の国々にそのしわ寄せが波及することは確実で、その混乱を引き金として、何れかの時点では『地域間戦争』『核テロ』などの人為的大災厄の生起も想定されます。

 そして、そうならないために、この大借金のツケをソフトランディングさせるための唯一の策として想定出来るのが、『世界経済全体の大幅な持続的発展』であり、その方法しか危機を回避する道はないのです。

世界の経済規模が、現在の数倍に拡大すれば、基本的にはこの問題はうまく軟着陸させることが可能となる筈なのです。
嘗て、19世紀初頭のイギリスでは、国民所得に数倍する国債の発行残高を抱えており、経済破綻が懸念されていましたが、その後の産業革命の進展に伴なう活発な民間投資と経済成長、緊縮財政策などにより、徐々にその比率は低下し、破綻の危機は社会の発展とともに自然に回避されたという事例もあるのです。

 今現在、特に開発途上国が経済規模を拡大しようとしている矢先であり、その下地は十分にあるわけですが、少なくとも今のままのエネルギー事情、資源事情では、その健全な発展は不可能なのです。
中国をはじめとする第三世界の住民全員が、今のアメリカ人と同じ生活をしようとした場合、地球が12個も必要であるとの試算もあり、そのモデルが米国人から日本人に変わったとしても、やはり地球数個分は必要となるのです。そしてまた第二の人口大国であるインドも、大幅な経済発展の途上にあります。
つまり、今のままのエネルギー事情、資源事情では、今の経済危機を何とか乗り切ったとしても、その後世界経済が継続して順調に発展することは、物理的に不可能なことなのです。

 結論、話は戻りますが、今、アメリカとそして世界が最も取り組むべきことは、全世界を巻き込んだ『21世紀のアポロ計画規模の取り組み』つまり、画期的抜本的な技術開発、エネルギー開発なのです。
より具体的には、世界のエネルギー問題を抜本的に解決させる技術の開発『核融合エネルギー』の実用化なのです。そしてそれ以外には、世界経済を継続的に発展させうる手立ては無いのです。
エネルギー問題を抜本的に解決し、同時並行して『資源の再活用システム』を世界規模で構築できれば、世界全体の継続的経済発展は十分に可能となるのです。
核融合エネルギーこそが、クリーンでCO2を排出しない、事実上無限の究極的なエネルギー源と言え、オバマ氏の唱えるグリーンニューディールの趣旨にも沿うこととなるでしょう。
 そしてその開発こそが、このままでは将来において生起が必至と見られる世界経済の大混乱とハイパーインフレ、そしてそれらに伴う世界秩序の大混乱を回避できる、唯一の道に他ならないのです。

※以上についての、より具体的な私論は、このHPの『離陸社会への展望 第6章』  を参照ください。







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