ただほど高いものはない?! 無料セール氾濫の裏に  2009/ 2/ 26



☆特に最近、様々な分野の商品の販売促進策で、『無料』とか『ただ』という文字の氾濫が見受けられるようになりました。

曰く

◎○○TVショッピング ⇒ 今、○○をお買い上げいただきますと、同じものをもう一個お付けして、お値段そのまま!2倍お得なセール! 今なら送料も無料

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云々云々

 なぜこのごろの物販コマーシャルは、無料という宣伝文句ばっかりなんだろう?という感じがずっとしておったのですが、最近読んだ『行動経済学』の本で、その疑問が氷解しました。

※行動経済学:人間は合理的であると想定した『経済人』を前提とした経済学ではなく、意思決定の参考となる情報を無視することが多い『実際の人間』を前提とし、生身の人間のもっている「非合理性」を明示的に考慮して、そのような人間の立場から個人の行動や社会現象を観察、分析して、その結果や行動パターンの究明を目的とした経済学。 (Wikipedia等による)

 最新の行動経済学のセオリーでは、消費者は、ある商品を買うか買わないかを判断する際に、『無料』とか『ただ』という言葉には非常に敏感に反応する性向を持っており、平素は理性的な判断が出来る人においても、無料という文字につられて、合理的な判断を狂わせることが多いという事実が明らかになっているそうです。

ダン・エリアリー著『予想どおりに不合理 Predictably Irrational』(早川書房 2008/11)によると、人は、『無料』という条件に対し、実際以上に大きな魅力を感じてしまうそうで、これは人が『極力リスクをとりたくないという想い』の裏返しの心理だそうです。

上記によると、著者は以下を一例として様々な実験を行い、その事実を検証したそうです。

『Amazonの商品券10ドル分を無料で受け取る』のと、『20ドル分の商品券を7ドルで受け取る』のとどちらを選ぶかという選択肢に対し、大半の被験者は、無料の10ドル商品券に飛びついたそうです。
 冷静に考えれば、13ドル分のもうけになる20ドル商品券の方を選択するはずですが、それよりも『無料』の魅力にはかなわなかった人が多かったとの事です。

同様に、今度は

『Amazonの商品券10ドル分を1ドルで受け取る』のと、『20ドル分の商品券を8ドルで受け取る』のとどちらを選ぶかという選択肢(つまり支払額はそれぞれ1ドルずつアップしたが、被験者の儲けの差は同じ)に対しては、逆に大半の被験者が冷静に計算して、20ドル分の商品券を受け取ったそうです。

この『無料!がおこす不合理さ』の効果については、上記実験の如く、最新の行動経済学において様々な実証がなされており、その影響によって、それを猫も杓子もマーケティング活動に応用した結果が、現在の『無料セール』、『ただセール』のオンパレードに繋がっている様なのです。 確かに、そこには何がしかの成果が出ており、それがために無料セールが一世を風靡していることも事実でありましょう。


☆しかし現実には、日々、テレビやネット、紙面媒体などで四六時中そのフレーズや手法に晒され続けている我々にとって、無料の文字の氾濫は、些か食傷気味になってきていることも、また事実なのです。

つまり、『行動経済学の成果に基づく"無料効果"を期待したマーケティング手法に対する学習効果』によって、逆に我々は、昔からの格言『タダほど高いものはない!』に再度、真実性を見出す結果となっているようです。

 いくら人間がその本姓によって、些かのリスクを取ることも嫌がる性向を持っていたとしても、やはり度が過ぎた喧伝をしてしまっては駄目だ、ということなのでしょうね。 行動経済学のお陰で、我々は自分自身の弱点に気付き、これでもかという程の物欲と無料セールの誘惑に対して、四六時中鍛えられているのです。


☆そこで改めて思い起こされるのが、昨今の公明党と自民党が打ち出している、自称景気刺激対策『定額給付金』です。 
ただで、つまりもらう方が全くリスクなしに、日本人でありさえすれば、『笑っていればもらえる』お金を、気前よく配ります、という施策を打ち出しているわけです。
 そして、そのお金は国民に対するつけで賄われ、将来それが何倍にもなって帰ってくるという事も明らかになっております。 
この、絵に描いたような、姑息で何の工夫もない『無料セール』に対して、国民の大半は冷ややかな見方しかしていないことは、様々なアンケートでも明らかになっています。 にも拘らず、票読みに対する打算と意地とヤケクソで、このまま突っ走ってしまう政府与党に対しては、もはやつける薬は何もない状態、というしかないでしょうね。

 定額給付金なんて、三流のTVコマーシャル以下の『無料セール』の手法には、誰も騙されませんよ。






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