北朝鮮という国が存続している理由について アメリカはなぜ北朝鮮を叩き潰さないのか?  2009/ 4/ 5



☆本日(2009年4月5日)、北朝鮮が、かねてより予告していた『人工衛星』と称する長距離ミサイルを発射した、との報道が殆ど全てのメディアで報じられております。
テポドン2号の改良型と見られているこのミサイルは、何とか発射には成功したようですが、そのミサイルの概要云々よりも、それに反応した日本国内の対応の方が、より深刻な問題であると感じたのは、筆者だけではないと思われます。

 前日の二度にわたる政府の誤報や、号外まで発行してお祭り騒ぎ状態の各マスコミの報道姿勢など、どうも日本国として、必要以上に過敏な、また浮わついた態度が見られ、良識ある市民として冷静に見た場合、政府やマスコミの、国辱ものと言わざるを得ないドタバタ対応が些か鼻につき、白けてしまった感じがし、また同様に、各国の駐日メディアも些かあきれ顔で報道しているのが、何とも腹立たしい想いです。

政府としては真面目にやっているところを見せたいでしょうし、自衛隊にしても、給料分と予算分の仕事はきっちりこなしているという事を国民に示したかったのでしょうが、源平の富士川の合戦まで引き合いに出されて『水鳥の羽音に驚くが如くのうろたえ方』と酷評されるオチがついてしまいました。


☆WEBニュースより『北朝鮮「衛星打ち上げ成功」と報道』
 『北朝鮮の朝鮮中央通信は5日午後3時半、運搬ロケット「銀河2号」による人工衛星「光明星2号」の打ち上げに成功したと報じた。
 それによると、ロケットは3段式で、同日午前11時20分に咸鏡北道花台郡にある東海(日本海)衛星発射場から発射され、同11時29分2秒に軌道進入に成功した。
 軌道傾斜角は40・6度で、近地点490キロ・メートル、遠地点1426キロ・メートルの楕円軌道。周期104分12秒で地球の周りを回っている。
 衛星は「金日成将軍の歌」「金正日将軍の歌」のメロディーと測定資料を周波数470メガ・ヘルツで送信し、UHF帯の通信中継を行っているという。』
(2009年4月5日16時18分 読売新聞)
☆19時現在のTVニュースによると、米軍の情報では、軌道に乗っている物体は全く存在していないとのことで、結論、衛星軌道への打ち上げには失敗した模様です。

 北朝鮮がこのミサイルの最終段を『人工衛星』とする意図は多分あったと思われますが、現実には、米国領まで届く長距離ミサイルの実験以外の何者でもないことは、世界の衆目の一致するところありましょう。 彼の国が、今回のミサイルを人工衛星の打ち上げとして強調したかった理由は、若し軌道上に何らかの物体を乗せることに成功した場合は、次回からのミサイル実験を、大手を振って、『人工衛星の打ち上げである!』と強弁する大義名分を手に入れることができる、と彼等自身考えているからです。
でも、前回の不完全な核実験にしても今回の衛星にしても、肝心な最後の詰めができていないのは、やはり強権国家の宿命なのでしょうか。

 勿論、今回の打ち上げによって極東におけるミリタリーバランスが変わったり、各国の対北鮮政策が変わったりすることは全くあり得ないことですが、当の北朝鮮にとっては、イランとの技術提携や、今後のミサイル輸出に、ある程度の目処がつくこととなったと思われます。

 オバマ米大統領は、早速この件に関し強い非難声明を出しましたが、さりとて、現実論として今後アメリカの対北朝鮮政策が根本的に変わることは基本的にはあり得ないと思われ、北鮮側もそのあたりのことは十分に読み切った上での行為であろうと考えられます。
 しかし、特にイスラム圏諸国に対してはあれほど強硬なアメリカが、北鮮に対しては、何故さほど強硬な姿勢を貫かないのか、ずっと疑問に思われている向きもあると思います。
人権問題にあれほどうるさいアメリカが、日本人の拉致問題などに関して、なぜもっと踏み込んだ態度を取ってくれないのか、歯がゆい思いをしている人も多いのではないでしょうか。
かつての前ブッシュ政権は、北鮮を『ならずもの国家』に指定し、その非人道的な姿勢を非難し強硬姿勢を貫いていた時期もありましたが、最近、特に核実験強行以降はその方針を変更し、ならずもの指定を解除したりと、ブッシュ政権末期においては比較的軟弱な態度が目立つようになりました。


 この、『アメリカはなぜ北朝鮮を叩き潰さないのか?』、というテーマについては、過去から様々な論が見受けられます。
勿論、彼の国は中国共産党政権の『一の子分』を自負しており、中国の現政権も、北朝鮮を些か持て余し気味ではあるものの、依然として『一枚の外交カード』としての有効性を認めており、アメリカ対中国の外交構図の中にも一つの前提として組み込まれていることもあって、中国共産党が北鮮を有効カードと認める限り、アメリカもそれを無視する訳には行かないということも事実ではありましょう。

 しかし(このことは北朝鮮の核実験の項にも書きましたが)、実際のところは、それ以上に、日本と韓国に対する『米国の持ち札』としての有効性による意味合いの方が大きいのではないでしょうか。 現在、日本の防衛費は年間4兆8千億円(2008年度)程度ですが、その内の人件費を除いた相当な額が、イージス艦や戦闘機など、米国からの多額の武器輸入に充てられている訳です。 韓国も同様で、特に最近は国家予算の一割以上(2006年度で210億ドル)を防衛費に注ぎ込んでおり、地理的歴史的に北朝鮮を意識せざるを得ないこの両国は、アメリカ軍需産業にとっては、ずっと『大の上得意さん』であり続けているのです。

 勿論、旧式武器が大半の北朝鮮が現実的な脅威となることは、今後も全く無いといってよい訳ですが、そこは彼等も自分達の役割を良く認識しており、阿吽の呼吸で、各国の気を引くために核兵器だ長距離ミサイルだと、世上を賑わせているのです。 つまり、北朝鮮が存在し『色んな芸を見せてくれている』限り、日本と韓国は、米軍需産業の大のお得意先であり続けてくれる訳です。

そして米政府は、この事を十分認識しているが故に、北朝鮮に対する基本的なスタンスとして、徳川家康の言葉の如く『生かさず殺さず』に、今後も徹するものと思われます。 北朝鮮に住む一般市民の方々にとっては大変お気の毒な事ですが、彼の地が恐怖政治から解放される日は、もう少し先の事になりそうです。
また最近はそれに加え、『六カ国協議』というヤラセ劇場によって、中国に加え、ロシアまでこの『極東利権』に参加してきました。 日本と韓国をのぞく他3カ国は、どのみちこのおいしい状況を本気で解決するつもりなど無く、『生かさず殺さず主義』の対応で、ずるずる日韓から利権を引き出すのが狙いなのでしょう。 この様な状況の中、我々として、この六カ国協議の枠組みに対し、何らかの期待を些かでも持つことは、馬鹿を見ること以外の何者でもなく、彼等に些少でも借りをつくる必要など全く無いのです。 

 以上の流れから見て、現在、日朝間最大の懸案となっている拉致問題についても、残念ながらこの極東のパワーポリティクスが何らかの変化を来たさない限り、その解決は大変難しいと思われます。
日本が、六カ国協議に何らかの期待を持ち続ける限り、日本の国益に適った進展は、全く期待できず、貴重な国税が他国利権の餌食となるのみです。

 やはり我々日本人として、この北朝鮮問題に関しては、一喜一憂せず、もっと大きい目で長期的に眺める必要があると思います。 基本的には、『完全無視』を決め込むべきでありましょう。

 政府やマスコミはもっと節度を持ち、泰然自若とした態度に徹すべし!






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