草�g剛報道にみられた『ワイドショー社会』現象 　警察とマスコミのバカ騒ぎの底流にあるものは　　2009/ 4/25

☆４月２３日の未明、人気俳優の草�g剛氏が、酔っぱらって公園で全裸になり、大声を上げて、警察に捕まったと、大々的に報道されております。

　通常であれば『ただのヨッパライがフリチンになって騒いだ』というだけの、普通なら新聞ネタにもならない、ありふれた出来事が、天下のＮＨＫまで大騒ぎして逐一報道されてしまいました。　翌日の朝日新聞朝刊を見た所、さすがに一面には載せてはいなかったものの、最終ページに大きな紙面を割いて、詳しく出ておりました。

　その後の各紙の論調やブログなどを見ますと、一般の人たちの受け止め方は、ほぼ筆者と同様に『大それた事もしてないのに、マスコミや警察が必要以上に大騒ぎして、かわいそう』と、本人に対しては些か同情的なニュアンスが目立っています。

　ストーカー行為をして誰かに迷惑をかけたとか、飲酒運転をしたとか言うなら話は別ですが、酒に酔って前後不覚となり、日頃のストレスを発散させるため、裸になって一人で大声をあげただけの、いわば誰にでも起こりうる、一寸した恥ずかしい行為の筈なのです。　筆者はこれまであまり草�g剛という役者さんを知りませんでしたが、逆に普段真面目な彼が起こした微笑ましい行為として、親近感を覚えました。

　また、以前、もうろう会見で大臣を辞めた中川氏などの事例と比較するのも酷な話です。中川氏は、Ｇ７という大事な『公務中』に飲酒したあげく国益を害したのであって、論ずる次元が全く違う訳ですから。


　草�g氏の行為に関し、一部の政治家がトンチンカンなコメントなどを出したものの、世間の風向きが違うのを見て慌てて訂正しておりましたが、政府要人まで発言して、マスコミと一緒にはしゃぎ廻るという、この一連のバカ騒ぎに対し、うんざりした気分を抱いたのは私だけではないはずです。

　また通常であれば、一晩ブタバコに泊めて翌朝釈放、という警察の対応パターンの筈が、本人の自宅まで押しかけて家宅捜索を行ったという、警視庁の異常行動についても、その魂胆が鼻につく所であります。　芸能人＝大麻所持　という、ステロタイプの感覚だけでガサ入れを行ったとは到底思えませんね。
これは先般の、小沢氏秘書を逮捕した地検特捜部と同様の、警視庁が功名心や自己顕示欲などから大はしゃぎした、といった分析の方が正解と見るべきでありましょう。　組織の見識やモラルの劣化は、様々なところで進んでいるようです。

　この一連のアホくさい、そしてたまたま運が悪かった可哀想な人を俎上にあげスケープゴートにする、といった流れを見てみますと、そこに今、日本社会が置かれている一つの大きな課題が見え隠れしていると思えてならないのです。


　昨今は、各新聞社などが行うアンケート調査等の結果に対し、政治家や一部官僚などが一喜一憂して右往左往するという現象が起こっております。　もちろん、民主主義社会の根幹として、民意の尊重は当然のことではあります。
　しかし逆に、『民意を重視する』という大義名分に潜む課題や、問題点について、深く論じ追求しているケースがあまり見られないのです。
　単なる一時のアンケートをもって、それを党利党略に利用したり、逆に様々な有益な民意を、省益に反するからと意図的に無視したり、また、アンケート結果を、自省の都合の良い方向に誘導したり、といった情報操作も、同じ大義名分の元に堂々と行われており、むしろその方が多いように見受けられます。

　言うまでもなく、昨今のテレビ、雑誌や新聞などマスコミの影響力には絶大なものがあり、その力によって物事が左右されてしまう、また、事の是々非々ではなく、感情論によって左右されてしまうことも、往々にして生起しております。　そしてそれは、前述の如く何者かによって何らかの操作をされる危険性が非常に高い、という問題を根本的に内包しているわけです。
　こういった『民意を問うという大義名分』に潜む課題について、我々はもっと敏感になる必要があると思うのです。

　また一面、本来なら大方の民意を前提としつつも、より大所高所からの判断と意志決定をおこなうのが政治家や官僚幹部の役目の筈なのですが、今現在は彼等が国民からの信頼を、自業自得とは云え失ってしまっており、彼等にその発現を求めることが困難な時代となっております。　そして彼等の自信の無さと定見の無さの故に、彼等は『国民の意志を問う』という大義名分の元に、『民意におもねる』態度が目につきます。

　そしてその行き着いた先が、『ワイドショー社会』とでも言うべき、確とした思想やモラル、定見が不在の、成り行き任せの刹那的な態度が散見される社会になってしまっているのではないでしょうか。
嘗て小泉氏が一世を風靡した頃の政治パターンを評して『ワイドショー政治』などと言われておりましたが、実は、社会全体がワイドショー化してしまっていると考えた方が正解と思われます。
　勿論これは日本のみならず、世界全体も似たような傾向にあるともいえましょうが、少なくとも他の国においては、２０世紀にその大半が滅んでしまった過去の『価値観』に換わる何かを求める努力をしている、とは言えると思います。　現在の日本社会は、新たな社会指標を未だ見つけることが出来ず、見つける努力の端緒にもついていないとしか思えません。　ワイドショー社会の行き着く先は、『漂流社会』なのかも知れません。


　『経済一流、政治は三流』と他国から揶揄されてきた日本ですが、その最大の要因として、民間企業の成功は、トップのイニシアティブと決断力に負うところが大きく、逆に政治の混迷は、今の政治家の人達のイニシアティブと決断力の無さを暴露しているに他なりません。

　日本の政治レベルを向上させるために、今の政治家と官僚幹部の皆さんに最も必要なものは、『道理我にあらば百万人といえど我行かん』という孟子の言葉の実践ではないでしょうか。
　そしてそれを実践するのに必要なものは、丁寧に国民に説明し自信を持って説得しきるだけの強い信念と自負心、実行力です。　そしてそれは、決して無い物ねだりではないはずです。

　政治や社会システムが正常化し、地に足のついた正論が通る社会となれば、今回の草�g氏のことについても、笑って
　済ませられる社会となるはずです。
　　一日も早く、本来あるべきあたりまえの社会風潮が復活するよう、期待したいものです。

　地デジの準備はもう済んでるけど、彼をＣＭから降ろすような了見の狭いＮＨＫなら、受信料払ってやらないぞ！