オバマは『火星有人探査計画』を今すぐ撤回し『月へ帰る』べし!   2010/ 4/19



☆2010年4月15日に、米オバマ大統領は、2030年代中盤までに火星軌道への到達を目指すという、新たな有人宇宙探査計画を発表しました。 そしてこの計画が成功すれば、火星への有人着陸も目指すといいます。


 世界的な景気低迷を受け、彼はブッシュジュニアが前政権時代に打ち出した、月への有人探査計画(コンステレーション計画)の中止を発表しましたが、それによる米国内においての宇宙関連雇用の喪失や、技術開発能力の低下を懸念する声が高まったことに配慮し、新たに火星をターゲットにして、大胆な宇宙探索構想をぶち上げた訳です。

やはりどこの国の政権でも、前政権が目玉として打ち出した計画に対しては、趣旨、内容や事の是非はともかく、全面的に否定し抹殺したがる傾向にあり、(ブッシュ氏が打ち出したにしては)比較的穏当且つ妥当なこの月開発計画は、現政権の元で、問答無用で切り捨てられてしまいました。
 ※普天間基地問題にしても、民主党が野党として反対していたので引っ込みがつかなくなっただけの事なんですよね。


 この火星探査計画は、一見、なんか派手派手しくきらびやかな計画であり、かつてケネディが提唱したアポロ月計画と同様の、国民意識の高揚と合わせアメリカンドリームのシンボル的位置付けを狙ったものとも思えます。
また、これまで国際協調路線でやってきた宇宙開発事業を、以前のアメリカ単独開発主義に戻し、軍事技術とともに宇宙技術の独占と他国への流出防止を意図している、とも一部で言われております。 そしてこの火星計画によって、全米で1万人以上の雇用を生むとオバマ氏は表明しております。
しかし実際のところは、火星計画以外の宇宙開発は、スペースシャトル引退の余波もあって今後10年以上は、かつてライバルであったロシアのソユーズ技術や、民間企業に頼るしかないレベルの、他者に依存した形となってしまうのです。 宇宙開発の予算をトータルで見た場合、やはり相当な減少となっております。

 今回のオバマ構想を冷静に分析してみると、長い目で見た場合、米国自身にとっても、利益より不利益の方が大きいものでしかない事は明白であるようです。
折角、人類共有の財産?である月を、学術研究の段階から、積極活用の段階へ向かおうとしていたブッシュ月計画をお払い箱にして、一足飛びに米国民の原資をより高いレベルの計画につぎ込もうとするのは、今のアメリカの国家としての実力からすれば、些か手に余るものである、と言わざるを得ません。
オバマに、火星を米国領とする意図があり、火星有人着陸を根拠にそれを強弁しようとするなら別ですが、

彼等の意図として
1.宇宙技術において、既存技術からのブレークスルーのきっかけを作り、そのフィードバックによって米国内産業全体の技術的優位性を確保しようとする。
2.自ら火星探査を推進する事で、自然科学分野、特に宇宙分野での米国の優位性を担保しようとする。
などが挙げられますが、確かに、それらはこの計画を進める課程で一部は確保できるでしょう。


 ただ余り大風呂敷を広げ過ぎると、得てして息切れするものであり、また、次の政権になったとき、特に共和党に政権が移ったときには、根こそぎばっさり切られる恐れが多分にある訳で、そのあたりのさじ加減について、国家の舵取りを行うものの責務としてもう少しシビアに見てゆくべきだと思います。


 筆者としては、やはり現状、人類社会の成長の限界が見えてきたこの段階に於いて、一足飛びに野心的な計画に突き進むのではなく、宇宙開発にしても、先ず庭先の月をしっかりものにして、恒久的な橋頭堡や基地を作り、月の資源を有効に活用しつつ、次の『惑星開発』のステップに乗り出すべきと思っております。

特に月には、次世代のエネルギー資源である『核融合』に不可欠の『ヘリウム3』が大量に存在しており、それらを確実に自分たちのものとする必要があります。 月に恒久的な人類の施設を作ることは、今後不可欠なのです。 よって今、近々に取り組むべき宇宙開発の課題は、やはり『月に帰る』ことなのです。
月面都市の建設は遠い未来の話ではなく、人類全体として早急に行うべき事柄なのです。


 残念ながら、今回のオバマの宇宙政策は、今後の米宇宙開発の方向を見失わせるものでしかありません。
ティーパーティー活動をやっている人達に聴くまでもなく、オバマの支持層の中にも、この計画に反対の人達も多くいる、と聞きます。 決して単なる雇用対策、集票対策としての宇宙計画であってはならないのです。




 オバマ氏ももう少し冷静になって、そして打算的でない、人類全体に取って本当に必要な宇宙政策を打ち出して欲しいですね。








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