グルーポンがNASDAQに上場 『幻想ビジネス』は市民権を得られるか? 2011/11/17
☆ソーシャルコマースの新星『グルーポン』が、米ナスダックに上場し、時価総額1兆4千億円余りの値がつき、SONYやファーストリテイリングといった、リアル企業と肩を並べる株式価値となったと先日報道されておりました。
皆さんご承知の通り、このグルーポンに代表されるクーポンビジネスモデルは、一般に『退蔵ビジネス』と呼ばれております。
消費者がネット上で、格安で(多くは半値以下)物やサービスを購入でき、一方その購入した権利には期限があり、もし買った人がそのチケットを忘れたりして使わなかった場合、その支払った代価は、丸々運営会社の収益となる、と言うものです。
ではなぜそういったサイトに様々な企業が出品するのかというと、主としてはそこに掲載されることによって、ソーシャルコマースを使って手軽に宣伝ができるというメリットがあるからなのです。
参加出店した会社は、そのサイトで直接消費者に自社の商品やサービスを訴求でき、また取引が成立するためには購入人数の上限と合わせて下限もあり、ある程度の購入者が集まらないと取引が成立しないため、ツイッターやFacebookなどで消費者自らが他の知り合いに宣伝してくれるという仕組みとなっているからなのです。
筆者もこれまでにいくつかのクーポン会社に登録しております。(うち1社は、早々と会社が撤退しちゃいましたけど)
ユーザーとして、こういったサイトをうまく利用しショッピングで損をしないためには、当然、いくつかの心得があります。
先ず、契約し代金を支払って手に入れたクーポンは、絶対に忘れず必ず使う! これは当然ですよね(^0^)
わざわざ『退蔵ビジネス』という範疇になっている位なのですから。使わずに権利を流してしまったら、みすみすクーポン会社の思うつぼです。
退蔵 ⇒ 物資・金銭などを使用せずにしまいこんでおくこと。(goo辞書)
次に、半値!7割引!などの謳い文句は、まず疑ってかかる事です。
取っつきは安いと思っても、よくよく内容を吟味せねば、その商品なりサービスが、支払う代金の対価として妥当かどうか疑問なものもよく目にします。
最近よくある手法として、元値(平常価格)を実際の倍以上の値段に設定し、そこから5割引!などとして安く見せかけているだけの、不心得な出品者も見かけます。 ま、いわゆる上げ底商法ですね。
旅館など宿泊費の通常価格に、根拠の無い法外な値段を付けていたり、レストランなどでも通常のコースに1〜2品加えただけで値段を倍以上に設定したり、海外の『無名のブランド品』にべらぼうな『流通価格』を付けたりする手法です。
そういったことを知った上で、色々吟味してもやはり安いぞというのであれば、ポチしても良いと思います。
勿論、真面目に出店している店や会社も沢山あり、彼等はユーザーにサービスする事でそのお店や商品を知って貰おうという、宣伝費として見ているのですから。
これら最近注目されているクーポンビジネスについて、世上の見方として、今後世界的にもひとつのジャンルとして伸びてゆく、とする論評も多々見られます。
勿論その一方で、こういったビジネスを始めるには、殆ど初期投資も要らず気軽に始められる事もあって競争が激化し、類似サイトの乱立に伴い、トータルとして質の低下が容易に想定され、短期間で底が割れるのでは、といったシビアな見方もあります。
筆者が実際に購入し体験してみて、また様々なクーポンサイトをウオッチした感触として、このビジネスモデルについては、『退蔵ビジネス』という位置付けと同時に、また『幻想ビジネス』とでも言うべき側面があるとの感慨を持っております。
幻想とは何かと申しますと
☆サイトに出品する店や企業に対し、ネットで手軽に効果的な宣伝が出来るという『幻想』を持たせること。
確かに、適切な商品や真面目なサービスを格安で提供すれば、それなりの宣伝効果は得られ、相当数のお客に知って貰うことは出来るとは思います。
しかしユーザーからみた場合、単に格安だからその店や会社を利用したのであって、それが切っ掛けでその企業を知ったからといって、通常の価格でも今後もそこを利用するかというと、またそれは違う話なのです。
格安という理由だけで利用したお客さんが、そのままリピーターになるかというと、通常の商売でも同様に使ってくれる程、事はそう甘くはないのです。店が単に一時期忙しかっただけ、というくたびれもうけになる可能性は高いと聞きます。
☆サイトを利用するユーザーの立場に立ってみた場合
ユーザーが何らかのクーポンを購入し、結果としてそれを使わずに流してしまった場合でも、余り悔恨の念は起こらない、と言います。
要するにクーポンを購入した時点で、既にその人は自分の購買欲を満たしてしまっており、実際にそのモノやサービスが手に入らなくても別に惜しくはない、という心理が働くそうです。なんだか分かったような解らん様な話ですが、実際にその通りだそうで、やはりクーポンを購入するという行為が、購入意欲を満たす『幻想』を生んでいるわけです。
特に、何らかのエクソサイズやレッスンのクーポンなど、1〜2回通っただけで流す人は大変多いそうです。チケット買っただけで上達した気分になるんでしょうな。
また、格安での購入行為は、価格に対する『幻想』も生むこととなります。
こういった格安クーポンのサイトが掃いて捨てる程あり、そのいずれもが半額以下を訴えているわけです。それらを何度か利用したとしたら、その後は、もう通常の値段で世の中の物やサービスを買うなんて、馬鹿馬鹿しくってできない、となりませんかね。
通常で提示された価格が例え妥当なものであっても、実はもっと格安で手に入れられるという『幻想』を植え付けられてしまい、モノやサービスの価値に対する感覚が狂わされてしまうこととなる危険性もあるわけです。
筆者として、取り立ててこれらのビジネスモデルそのものを否定するものではありませんが、こういった格安クーポンビジネスの落ち着くところは、アウトレットなどの類の激安品を扱うのがメインとなるのではと考えています。
世界の全てが工業化社会に突入しており、オーバープロダクションの状態は今後もずっと続くでしょうから、『余った商品を効率的に掃かせるためのソーシャルコマース』は社会の必要ツールとなることは明らかなのです。
やはり世の中がこういった類のソーシャルコマースを受け入れて十分消化するまでには、今後も様々な紆余曲折があるのでしょうね。
グルーポンをはじめとする格安クーポンのサイトについては、ある程度その本質や得失を理解した上で利用することが必要と思われます。