リモートPCでFT8 2018/10
最近、アマチュア無線家の間では、無線システムのリモートコントロールが静かなブームとなっており、実家から離れて暮らすアパマンハムや、山の上の別荘にシャックを構えたリッチなおじさんハム達が、ネット回線などを使って日々リモートシャックを楽しんでおられると聞いております。
当方の場合、自宅が小高い丘の上にあり、またシャックも書斎兼寝室兼居間にあり、当面、他の場所からリモートする必要性は格別感じてはおりません。
しかしそこはアマチュア無線家。電波法で定義されている『アマチュア業務とは、金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。』との中の『興味と研究』ということで、今回、ネットに関する知識など余り持ち合わせていない中、無謀にもリモートシャックにチャレンジしてみる事としました。
幸い、今うちにある無線機はそれに完全に対応しております。
ICOMのIC−7610とYAESUのFT991AMを主に使っておりますが、この機械はパソコンとUSBケーブルで繋いで、データ通信や無線機のコントロールがいとも簡単にできてしまう優れものです。
特にICOMの機種は、純正の有償ソフトを導入すると、音声や電信の送受信まで簡単にできてしまう、リモートシャックユーザーの必需品です。
通常、無線機の制御は何とかできても、音声などをネット経由で送受信するとなると、別の様々なソフトを組み合わせなければならず、また特に自宅のルーター設定なども結構ハードルが高いといいます。しかし当該ソフトでは、それを見越して作られており、比較的簡単にセットできるとの事です。
ただ、今の所、そこまでやるつもりは未だなく、取り敢えず専用ソフトのお世話にならぬ範囲で可能な事を考えてみました。
当方が構築しているシステムだと、無線機専用に使っているPCをフルに外部からコントロールできれば、当面やりたいと思っているFT8モードでの交信は可能となるはずです。
いま無線局用に専用で使用しているパソコンは、HP製のスモールデスクトップPCです。
(もちろん中古。ネットで25K程で購入したものです。CPUはアイブリi7、HDDはSSDに換装しています。)
これに各種のデジタルモード等にオンエアする為のフリーソフト数種と、ロギングソフト(無線業務日誌用ソフト)はもちろんターボハムログを入れております。
このPCをシャックに置き、IC−7610とFT991AにUSBで接続し、音声以外のモードにオンエアしております。
具体的には FT8とJTモードは、JTDTとWSJT-Xを導入、それにJT-ALertとJT-LINKERをリンクさせてます。
また、SSTVには MMSSTV でオンエア。 RTTYにも MMTTY で出ています。
それと、電信の送受信用に DIGITALSOUNDCW を導入し、主にコンテストなどでラバースタンプQSOや確認用として使っています。
で、これらは全てパソコンがUSBケーブル経由で、無線機の送受信や、一部では周波数のコントロールまでを行っております。
つまり工夫すれば(一部での不自由さを多少我慢すれば)音声以外のモードに全てオンエアが可能となる筈なのです。
先日、その構築にトライしてみました。 事前に用意する物は、コントロール用のノートパソコン一台のみです。 もちろん幾許かの知識は事前に仕入れて、必要なものはネットからマニュアル等をダウンロードしておきました。
そのやり方ですが
1.先ず無線用のPCを、遠隔でON/OFFできるようにせねばなりません。
やはりずっと付けっぱなしではかっこ悪いですので。 そしてその為に、無線用PCの WAKEUP ON LAN 機能をONにする必要があります。
◎PCを立ち上げてBiosに入り、WAKEUP ON LAN の項目を見つけてON
◎その後WindowsのコンパネからLANアダプタのプロパティ ⇒ 電力管理 ⇒ Wake on Magic Packet にチェックを入れる。
◎家に導入しているルーターの機能に『WAKE ON LAN』機能があったのでONにし、必要項目を設定。
◎クライアント用PC(リモートする側のノートPC)に自宅ルーターのIPアドレスを登録します。
もちろんうちは普通の光契約なので、IPアドレスについては動的(プロバイダの都合で変わる)なのですが、これもたまたまルーターのメーカー(ASUS)に登録すれば、同社のDDNSサーバーを使わせてもらえるそうなのでこれを活用します。
ルーターの機能にDDNS用のドメインを設定する項目があり、そこに入力して登録完了。
ここでWAKEUPを試してみる事にします。 クライアントPCをスマホ経由のテザリングで外部から接続し、まず自宅のルーターに繋ぎます。 ルーターにログイン後、WAKE ON LANを実施。 一発で無線用パソコンが立ち上がりました。 まずは成功。
でも立ち上げはできたけど、このままではパソコンのコントロールはおろか電源のOFFもできません。
2.つぎにリモートデスクトップ機能を設定します。
つまり、目的とするパソコンを外部から遠隔操作するための設定です。
これには現在様々な有償無償のソフトがあります。
メジャーな所では TeamViewer や Microsoftも純正のリモートデスクトップ機能があります。
ただ何れも一長一短があり、検討の結果、最も手軽で汎用性も高い Googleの『Chromeリモートデスクトップ』を導入してみる事にしました。
◎まずGoogleアカウントを取得する必要がありますが、これは以前からG-mailを使わせてもらっており、そのアカウントを使う事にします。
◎次にサーバーPCにChromeをインスコします。 当方は以前よりFirefoxをWEBブラウザとして使っており、Chromeは入れてなかったのですが、今回リモート用として導入しました。
◎Chrome導入のあと、『Chromeリモートデスクトップ』を追加します。
◎その後Chromeを立ち上げ、アプリ画面のリモートアイコンから、リモートデスクトップのホストとしての設定を行います。
『リモート接続を有効にする』ボタンをクリックし、『ホストインストーラ』をDLしインスコします。
◎セキュリティ用にPINを設定。パスワード用に長い数字列を入力します。覚えとしてしっかりメモ。
◎ホストPCのスタートアップにChromeを登録し常駐させます。
◎次にクライアント用PC(リモートする側のパソコン)にも同様にChromeを導入しリモートデスクトップも入れておきます。
以上で設定は完了です。試しにまたテザリング経由でクライアントPCを外部から接続し、リモートを試してみます。 PC画面のアプリアイコンからリモート先を選んで接続を試みます。
最初にWAKE ON LANを行い、PCが立ち上がるまでしばし待機。その後リモート接続ボタンをクリック。
おおっ! いとも簡単にサーバーPCとつながりました。すごい! (別に大した事じゃ無いって(^-^;)ゞ)
ただ、サーバー側を2画面設定にしているので、全画面が見えるけどすごく小さい。 左上の設定で調整し、原寸大の画面にします。 その状態からバーを上下左右に動かせば、両画面とも自由にアクセスできます。
3.同じ室内からリモートでFT8モード等の実用性を検証
本格的に無線リモートシステムを使おうと思えば、当然免許状の変更申請が必要となります。
ただ今回はそこまで行うつもりはなく、単なる検証実験ですので、リグに手の届く同じ室内からコントロールしてみる事とします。
◎まず定電圧電源と無線機をオンしておきます。(もちろん手動です(^0^))
◎あと、リニアの元電源をON、ローテーターの電源も入れておきます。
◎無線用PCの電源はOFFのまま。
◎つぎにクライアント用のノートPCを立ち上げ、テザリング経由でネットと接続します。
◎WEBブラウザ経由でルーターに接続を試みます。 ルーター内のWAKE ON LAN機能を使いサーバーPCをON。
◎サーバーパソコンが立ち上がってから、ノートPCのChromeリモートデスクトップアイコンからリモート接続を試みます。 ここまでは順調に成功。
◎さてここからが本番です。 リモートで無線用PCの画面上にあるFT8ソフトのアイコンをクリック。 立ち上がりがノートPCでも確認できます。 無線機の周波数等はソフトからコントロールできるので、7Mhz帯の国内向け周波数にノートPCから設定。 画面上に各局のコールサインが見えてきます。 そのうちの一つを選んでクリック。 無線機が送信状態となり、暫時後相手局から応答がありました。一連の遣り取りの後無事交信は終了。(事前にパワーは10Wに絞っておきました)リモートでも通常通りの交信が可能であると確認でき、ログも正常に取れていました。
◎その後、ノートPC画面からリニアアンプの電源ON/OFFと各種コントロール(電波は出しません)、ローテーターのコントロールも全く同様にできる事を確認しました。
◎次にFT991A用のコントロールソフト『RMradio』も試してみました。 このソフトはハムの有志が作られたフリーソフトで、当該無線機のコントロールをパソコンから行えます。
ただ、音声などの送受には対応しておらず、基本的に手元でリグと一緒に使用する事が前提のようです。しかし電源のON/OFFが可能なので重宝しそうです。
4.結論として
今回の実験で、デジタル通信に関しては、簡単な接続設定でリモートは完全に実用になり、それもオール無料でシステムが構築できる事が確認できました。
この先、若し本格的なリモートシャックの構築を考えるとするなら、やはり専用ソフトを導入し、音声の遣り取りや電信の送受なども範疇に入れる事になると思います。
最近のパソコンやネットワークの進歩は著しく、我々アマチュアレベルでも、やろうと思えば簡単手軽に面白い事ができると感じました。